第4回

歯と口の病気(3) 歯周病が全身に及ぼす影響

歯周病は「口だけの病気」と思っていませんか? 歯周病が悪化すると、歯周病菌が全身をめぐり、体のさまざまなところで病気を引き起こしたり、悪化させることがわかっています。

歯周病が全身の病気の引き金に!?

① 脳梗塞 歯周病菌が動脈硬化を進行させて脳の血管を詰まりやすくし、脳梗塞の原因となる。
② 認知症 認知症の多くを占める「アルツハイマー病」を発症するリスクが、歯周病患者では1.7倍になるという報告がある※。
※Chen CK et al. Alzheimer's Research & Therapy, 2017.
③ 心臓病 歯周病菌による動脈硬化が心臓の血管を詰まらせ、狭心症や心筋梗塞につながる。また、感染性心内膜炎といって、心臓の弁に歯周病菌が感染して炎症が起きる。
④ 誤嚥性肺炎 歯周病菌のついただ液や飲食物が、誤って気管に入り、肺に流れ込んで肺炎を引き起こす。高齢者では死に至ることもある。
⑤ 糖尿病 歯周病の炎症によって作られた物質がインスリンを効きにくくし、糖尿病が悪化する。また、糖尿病が悪化すると歯周病を発症しやすくなる。
⑥ 骨粗しょう症 歯周病で歯が抜けると、食べ物をかむ力や飲み込む力が弱まり、骨を作るのに必要なカルシウムやビタミンなどの摂取量が減り、骨粗しょう症が悪化してしまうおそれがある。
⑦ 関節リウマチ 歯周病が関節リウマチの発症に関わっている可能性があると言われている。
⑧ 早産・低体重児出産 歯周病菌や歯周病菌によって作られた物質が、早期の子宮収縮を引き起こし、早産・低体重児出産につながる可能性がある。

若い人にも多い歯周病

歯周病は、放置しているととてもこわい病気なのですが、「歯周病は高齢者の病気」「自分はまだ大丈夫」と思っている人も少なくないようです。

しかし実際は、10代でも25~30%に歯周病の初期症状である歯ぐきの出血がみられます。20代後半になると、30%以上の人が歯周ポケット4ミリ以上と重症化(歯を支える骨が溶けはじめた状態)しています。歯周病は若年層にも幅広くみられる身近な病気といえます。

歯周病とお金の話

歯科医院で支払うお金が1年でどれくらいになるか、あなたは計算したことがありますか?

国民全体の歯科にかかる医療費は、1年でなんと約3兆円。がん(約4.1兆円)に次いで第2位となっています。例えば心臓病は約2.1兆円、脳卒中は1.8兆円、糖尿病は1.2兆円ですから、歯科にかかる医療費がいかに多いかがわかります※1。

とくに歯周病の治療には、1人あたり年間約1万5,000円ほどかかっています。これはむし歯の約9.6倍※2。さらに歯周病がこわいのは、全身のさまざまな病気を発症・悪化させてしまうため、それらの病気にかかる医療費も増えてしまうところです。歯周病なのに、歯周病の治療費だけでは済まないのです。

歯周病を防ぐ方法のひとつとして、“定期健診を受ける”というのがあります。「定期的に歯科医院に通うなんて、それこそ医療費が……」と思われるかもしれません。でも、定期健診で歯周病を予防できれば、あるいは早いうちに発見・治療して軽く済ませることができれば、結果的に総医療費をグッと抑えることができるのです。

※1 厚生労働省「令和元年度国民医療費の概況」
※2 健康保険組合連合会「令和元年度歯科医療費の動向に関する調査」

グラフ:歯周病の程度別年間医科医療費、歯科健診頻度別年間医科医療費 グラフ:歯周病の程度別年間医科医療費、歯科健診頻度別年間医科医療費
歯医者さんに行くとお金がかかると思っていたけど、定期的に行く方が安く済むんだね

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