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社会的孤独が脂質代謝異常、動脈硬化を招く機序を発見<慶應大>
慶應義塾大学は昨年12月16日、社会的孤独が脳視床下部でのオキシトシン分泌を減少させ、肝臓における脂質代謝異常を招くことで動脈硬化を促進させる新たな分子機序を発見したと発表した。医学部内科学教室の研究チームは、社会性のあるマウスでも特に“絆”が深いとされる同胞マウスに限定して実験を行い、社会的孤独ストレスの影響を臓器横断的に検証。その結果、これまで推定されていた食事摂取量や体重の増加、交感神経系、視床下部-下垂体-副腎皮質系および炎症の活性化とは無関係に、社会的孤独ストレスが動脈硬化を進行させることを見出した。またその機序として、脳視床下部で産生されるオキシトシンによる肝細胞を介した脂質代謝制御機構が破綻することが原因であることを明らかにした。詳細な検討により、オキシトシンは肝細胞において、CYP7A1を介した胆汁酸の生成によるコレステロール排泄とANGPTL4およびANGPTL8を介したリポタンパクリパーゼ(LPL)活性制御による中性脂肪の分解という二つの機能を併せ持ち、全身の脂質代謝を制御していることを見出した。さらに、オキシトシンを経口補充することで、社会的孤独による脂質代謝異常と動脈硬化が抑制されることを確認した。
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